相続事件
1 相続が開始した時に最初に注意すべき点
被相続人が遺言書を作成しているのかどうかを確認することが重要です。相続人が複数存在する場合には、相続人の誰かが、被相続人に遺言書を作成させている可能性があります。
例えば、相続人の一人に被相続人の遺産の全てを相続させるという遺言が作成されていた場合には、他の相続人は、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内に、遺留分減殺(侵害額)請求権(相続財産の2分の1を取り戻す権利。但し、相続人が直系尊属のみの場合には3分の1を取り戻す権利)を内容証明郵便等で行使しておかなければ、全く相続できない状態となりますので注意が必要です。
2 手続の流れ
二つの流れがあります。
ア 一つ目は、
前項に記載した遺留分減殺(侵害額)請求権を行使した後、家庭裁判所ではなく地方裁判所に訴訟提起して、遺留分である相続財産の2分の1あるいは3分の1を請求する流れです。
判決まで行くこともありますが、和解で解決することも多いです。
イ 二つ目は、
家庭裁判所に遺産分割調停の申立をします。
遺産分割事件では、離婚事件のように調停前置主義がとられていませんので、必ず調停から申し立てなければならないわけではなく、最初から遺産分割審判を申し立てることも可能となっていますが、審判を申し立てても調停に付されることが通常のため、調停から始めます。
遺産分割調停の申立には、遺産目録を添付して、土地・建物、国債・株式・社債、預貯金、投資信託、保険契約の解約返戻金等の遺産の内容を明らかにする必要があります。
遺産分割調停は、通常、1ヶ月に1回のペースで2人の調停委員が出席して、半年から1年程度の期間行われますが、調停が成立しない場合には、調停打ち切りとなります。
調停では、どのように遺産を分けるか、例えば、ある相続人は不動産を相続し、ある相続人は預貯金を相続するといったふうに、相続人間で合意できれば、自由に遺産分割することが可能です。
遺産分割事件では、調停が不成立になれば自動的に遺産分割審判に移行することになりますが、遺産分割調停で解決するケースが圧倒的に多いです。
遺産分割審判は、家庭裁判所が行う裁判の一つで、訴訟手続のように公開の法廷で争うのではなく、簡易な手続で、当事者に対して裁判所の判断を示すものです。裁判官は、裁判所に提出された遺産に関する資料と当事者の陳述を基にして、裁判官が相当と考える遺産分割の判断を示し、それには強制力がありますので、当事者の合意がなくとも最終解決が可能となります。
3 必要な費用
ア 相続事件で、弁護士に依頼して法的手続をする場合に必要な費用は、弁護士費用(着手金と報酬金)及び裁判所に納める印紙代と郵券代です。
イ 弁護士費用につきましては、法律事務所によって異なっておりますが、当事務所の基準は以下のとおりです。
A 遺留分減殺(侵害額)請求訴訟の場合
着手金は減殺額(侵害額)の5%程度、報酬金は依頼者が、遺留分として支払を受けた金額の5%程度としております。
B 遺産分割調停・審判の場合
着手金は依頼者が相続すると予測できる財産の時価評価の5%程度、報酬金は依頼者が相続した財産の時価評価の5%程度としております。
ウ 裁判所に納める印紙代と郵券代
A 遺留分減殺(侵害額)請求訴訟の場合
印紙代は、請求額によって異なってきますが、参考としましては1000万円の請求であれば5万円です。郵券代は5000円で、相手方が1名増えるごとに2200円ずつ増加します。
B 遺産分割調停・審判の場合
印紙代は1200円です。郵券代は少し複雑で、 当事者双方の合計が15名までは、500円×2×当事者数、100円×2×当事者数、82円×6×当事者数、50円×6×当事者数、20円×10、10円×10×当事者数、1円×10×当事者数 (当事者が15名を超える場合には、1名増えるごとに82円×6を追加)です。
小泉哲二法律事務所
弁護士 小泉哲二
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